第4章 月と踊り子
三成は、●●の隣まで歩み寄り、そしてその場所に腰を下ろした。
白梅のような、甘い香りがした。
その瞬間、●●は体をこわばらせる。
空にあって遠く輝く月が、地にもあって●●の姿を見出したあの晩を上回る、
激しい動揺が身を襲った。
――私、どうすれば。
三成は、何かを確かめるように、●●の姿をじっと見つめている。
それも、手を伸ばせば触れられる程のすぐに近くで。
値踏みをするような賤しいものではなく、何かを一身に見定めようとする、ひどく純粋な視線だった。
その視線が、痛いほど身に刺さった。
あの晩の比ではない。
しかし一方で、●●の肌は、
舞台の上に流れる空気の厚みさえ感じ分けて踊る舞手の敏感な肌は、
――ほんの、一瞬、
その視線の中に隠れている、ひどく異質な感情に触れた。
なぜだろう、それは●●にも覚えがあるもの。
決して、遠くないもの。
むしろとても、近しいものに似ていた。
――孤独、だ
気付くより先に、理解した。
肌の震えが、●●の代わりにそうだ、と確信を持つように共振した。
理由は、分からなかった。
本当にそうなのか、なぜそうなのか、だとしたらどうすれば。
何一つ、●●の考えが及ぶ物はなかった。
ただ、自分にできるのは。