第1章 夜明け
やがて、上から下に至るすべての弟子が、本陣の奥座敷に終結した。
相当の広さを誇る大座敷は、瞬く間に純白の衣装の弟子たちの姿で埋まった。
「△△座一門総員、集まりましてございます」
平伏しながら口火を切ったのは、最年長の兄弟子だ。
とはいえ、まだ歳も二十歳の大台に乗ったばかりの若者だが、
凛々しい目元にはすでに、並々ならない役者の貫禄をどっしりと漂わせている。
座長が低く頷くと同時に、平伏していた弟子たちは一斉に面を上げた。
その表情、顔つきは様々だが、全員揃って緊張を張りつめ、不安げな視線を一身に座長に向かって投げかけている。
痛いほどのその視線を真正面切って受け止めながら、座長は言葉を発した。
「皆の衆、今日は朝早くから悪かったね。足を崩して、少し楽にしていてくれ」
しわがれているが、非常によく通る美しい声だった。
弟子たちはお互いを顔を見合わせ、ほんの少しだけ、姿勢を崩した。
それを認めると、座長はもう一度小さく頷いた。
「さて、もう皆もほとんどが知ってのこととは思う。
うちの座にね、『石田』殿からのお声がかかった。」
知っているとは思うが、と言い置いても、その場は一気にどよめいた。
まさか、ではなく、やはりか、というため息が、隠しようもなくあちこちから噴出する。
さすがに座長に最も近い上座の兄弟子たちは、顔に出してたじろぐことはなかったものの、
それでも眉をわずかに上げない者はなかった。
座長も、深いため息とともに、白髪頭をひとなでした。
「断ることは、できぬようでね」