第3章 幕間
昨夜の御前公演は、結局大成功の裡に幕を閉じた。
ほとんど言いがかりのような御前公演を前に、
●●をはじめとする一座の者たちは、もはやこれまで、とあらかじめ覚悟を決め、
さらに、実際公演が終わった後は、極度の疲労と、何より未だかつてないほどの高揚感、
達成感に包まれ、「これで死ぬなら、踊り子の本懐」とまで感じてさえいた。
それが一転、凶王の裁定は「御咎めなし」だった。
その夜のうちに△△座に触れが出たのである。
おまけに、御用一座として、今後もできる限りの優遇を与える旨の告示までなされた。
△△座は、天地が引っくり返ったような大歓声に包まれた。
後は、夜を徹しての大どんちゃん騒ぎである。
上弟子下弟子入り乱れ、酒樽を大広間に担ぎこんで、朝まで大広間では飲めや歌えの大祝いが続いていたようだ。
未だ病状が予断を許さぬといわれている祖父でさえ、升酒をうまそうにすすりながら、
見事な囃子を謳っていたのは覚えている。
無論、●●はその晩の主役として広間に引きずり出されたが、
生まれて初めての酒を無理やり喉に流し込まれたせいですぐに目を回してしまった。
広間の端で休んでいる間、そのまま意識を失ったのか、
気付けば今こうして、奥座敷の中に一人座り込んでいる。
どうしたものか。
●●はどうにもやるせない様子で周りを見渡した。
薬のおかげか、頭痛は大分和らいできた。
しかし何ともいえない胸苦しさは相変わらずである。
強い酒だったから、まだ体から抜けきっていないのだろう。
年上の下弟子仲間が、酒を飲みすぎた日は朝湯に限る、と言っていたことを思い出し、
することもないので、とりあえず湯屋に行くことにしよう、と立ち上がった。