第7章 実利主義
謙信様に伊勢姫様のことをずけずけと質問して、あまつさえ代わりになりたいなんて言ってしまった。
デリカシーの無い私が全て悪いのにな、と後悔やまない私が、現状打開のために考え出した苦肉の策──
「だってさ、佐助くん。
一緒にいるためには信頼と実績が必要でしょ?
働かざる者食うべからず、今のままじゃタダ飯まっしぐらだもんね」
突然この世界に落とされた私を拾ってくれた。
一時でも淡い夢を見せてくれた。
無礼なことを言っても、追い出したりせずに居てくれる。
──それで、充分すぎるのだから。
その恩に報いたい、私も何かしたい、と佐助くんに必死に頼み込んで…
今こうして、私は佐助くんと旅路の途中にいる。
「…謙信様は、そんな事望んでるのかな」
佐助くんの誰に向けたともつかない問いかけに、私は苦笑して答える。
「どうだろう、分からないけれど…
結局は私が望んでるだけ、なんだろうね」