第7章 実利主義
「…本当によかったんだろうか、さん」
もう何度目か分からない、佐助くんの問いかけに私は辟易しながら頷いた。
「いいの!これで!
…あ、でも佐助くんが怒られたら申し訳ない、けど」
「それは別にいいんだけど…こんな事する必要あるのかなって」
佐助くんが心配してくれているのが、無表情の奥から伝わってくる。
無理もないだろう、とまた内心ため息をついた。
謙信様との逢瀬…無念の途中切り上げだったけれど、からもう一月経つか経たないか。
私と謙信様の険悪ムードは未だ続いていた。
挨拶はするけれど、それだけ。
にこりともしないし、こちらも出来る雰囲気じゃない。
お酒を酌み交わせば全て解決、なんて言える様子もなく。
ただ、極々たまにじっと私の方を睨んで…いやいや、強い視線で見つめてくるのが気にかかる。
このままじゃいけない、と謙信様も思って下さっているんだろう、けれど膠着状態は続く一方。
幸村に私の言動について本気で呆れられ、
信玄様には私が伊勢姫様を知るきっかけを与えた、と本気で謝られ。
謙信はいつまで経っても何も言わない、と…
信玄様が掴みかかりに行くのを、必死で止めた事もあった。