第6章 【閑話休題】ゆきとすず
今までのは何だったんだ、なんて呆気に取られながら、しかし。
妙な嬉しさに囚われて、すずの背に回していた手を徐ろに胸に這わす。
そりゃそーだよな、四六時中一緒にいたのに、いつ他の男と致す暇があったと思うのか。
「ゆき、わ、ぁ、なに…?」
「男の悦ばせ方は知ってんのに、こっちは知らねぇの」
「こ、こっち…?」
「男にも準備があるようにな、女の身体も準備しなきゃなんねぇんだよ」
「そ、そうだったんだ…ごめんね、ゆき、私の勉強っ…不足、で、」
息が上がっていくのに、訝しげな、しかし気持ちよさそうな顔をする。
自分の身に何が起こってるのか分からない、なのに抗わない。
必死に言葉を紡ぐすずが愛らしくて、口付けを落とす。
そしたら、それまでの女の顔から一変して、無垢な生娘の笑みを零すのが凶悪だ。
溶かされていくのはすずなのに、何故か、こちらが無性に焦る。
明日で道は分かたれるのに、今更になって、惜しいだなんて。
どうしてもっと早く、大切な物に気付けなかったのか。
「ゆき、なんだかわかんない、けどぉっ…
もう、なんか、入る気がするっ、んっ」
何だかわかんない、なんて。
妙な男の沽券と言うやつなのか、嬉しくて、もっと、という気分になる。
胸の飾りを舌で転がしながら、入る気がする、らしい穴へと指を刺す。
「あっ、はぁっ…」
「痛いのか?」
「痛くない、けど、じんじんするぅっ…!」
反応は好い、けれど…
よくこれで入る気がするなんて言えたな、と暴力的な狭さに舌を巻きながら。
声が高くなる方へ、奥へ、斜め上へ、誘われるままに指を進めていく。
こんな時、の女の声なんて聞くのは勿論初めてなのに。
すずが気持ち良いのは、悦んでいるのだけはどうしてだか、すぐに分かるのだ──
「ゆ、ゆきぃ…ごめんね、私ばっかりっ…あぁっ」
「ばか、これでいいんだって、黙ってろ…
いや…喘いでろ」