第6章 【閑話休題】ゆきとすず
──だから、今もわかるのだ。
「ゆきは強くて格好いいから、きっとすぐに縁談が舞い込んでくるだろうね」
今すずが強がって、泣くのを堪えている事くらいは。
「いきなり、何の話だよ?」
「越後に行ったら、きっと引く手あまただなーって思って。
同盟を結んで関係強化って言うと、手っ取り早く婚姻じゃない?」
「…信様がいるだろーが。順番なら俺より先だ」
「信様にはその気が無さそうだから。きっとゆきに話が回ってくるよ」
「俺だって…嫁を取る気なんかねーよ」
それきり、二人して黙り込む。
どうしてこんな時まで素直になれないんだろう、今だってそうだ。
すずと隣り合わせなのに、横向きに寝転がって顔すら見れない。
肩でも抱いてやれ、そうしたら全て上手くいく…
頭の中には、信玄様の言葉が浮かんで。
そんな事出来るかよ!なんて、いつも通りの自分が噛み付いた。
はあ、と重苦しくため息をついて、さてすずはどうしているだろうか、と。
様子を伺おうと、首だけ動かし振り返る──