第6章 【閑話休題】ゆきとすず
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かーん、と澄んだ小気味よい音が鳴り、木刀は俺の手から離れて飛んだ。
そしてその勢いで、俺は無様にも尻餅をつく。
間髪いれずに容赦なく木刀を突き付けられ、降参、の意味を込めて両手を上げる…
するとすずはその名の通り、鈴を転がしたような笑い声を上げた。
「ゆき、討ち取ったり!」
「へーへー、俺の負けだな」
「あはは、でもゆきに負けは似合わないよ。
…ほら、汚れるから立って」
差し出された手を支えに、ぴょん、と弾みをつけて立ち上がる。
妙に大人っぽくて優しい笑みを向けられ、むず痒い。
照れ隠しにとん、と、形の良い額目掛けて手刀を落とした。
「へへ、返しの一本取ったり、だな」
「あっ、もう…!ゆきってばー!!」
その後、木刀を飛ばされたままで丸腰の俺は…
本気で頭を下げて謝るまで、すずに追いかけ回されたのだった。