第6章 【閑話休題】ゆきとすず
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「幸村、なんだか機嫌がいいな」
「ほんとだー、何かあったのかな」
幸村の背中を見ながらこそこそと話し合う、と佐助。
本人に聞かれたら、ツンデレを拗らせかねない…そんな配慮からだった、けれど。
「なに、月の半ばとなるといつもの事だ。
大方、すずから文が届いたんだろう」
「あぁ、いつもの…」
「す、すずちゃん!幸村の彼女!!」
「なーにお前達はコソコソと…ったくよぉ」
わざとなのか、いつも通り微笑みながらそう言った信玄と、興奮したが上げた大声に、幸村が紅く染まった顔で文句を垂れる。
あちゃー、と頭を抱える佐助を小さく睨みつつ、しかし。
機嫌のすこぶる良いらしい幸村は、それ以上何も言わず…
だいたい月に一度届く文が知らせてくれる、恋人の無事に頬を僅かに緩ませながら。
少しばかり、昔の事を思い返していた。