第1章 享楽主義
もっと俺に感謝してくれてもいいよ、と眼鏡のレンズを光らせた佐助くんに、ひとまずサムズアップしておく。
佐助くんの話に幸村は眉を顰め、信玄様は朗らかな笑い声を上げた。
「…お前…随分と都合の良い話にすり替えたんだな」
「やだなー、幸村。誤差だよ」
「これは…俺にもまだ、天女を手に入れる好機が巡ってくるかな?」
「わー、信玄様、残念!私は謙信様一筋なのでっ」
「…またお前は、実のない話に花を咲かせているのか」
そこに、空気の色を変えてしまうような、圧倒的な気配を感じ。
骨まで痺れるような、艶のある低い声に、思わず笑いがこみ上げてくるのを堪えながら振り向いた。
「謙信様!お待ちしていました!」
「待てと言った覚えはないが、待っていた褒美だ。帰って酌をしろ」
「謙信様とサシ飲み!願ってもないご褒美です!」
「俺と同等に呑める女など、この世にお前しかいないだろうな」