第1章 享楽主義
「と、まぁ。そこからはご存知の通り!
倒れてた私を見つけて、お城に連れてきて下さって…献身的に看病して貰った結果、今やこうして立派に縁のお姫様をしてるって訳!
だから…あの人は私の王子様なんだよ」
あの人、のことを想像しただけでうっとりと。
にやける頬を抑え話を終えた私に、おぉー、と少しのどよめきと、おざなりな拍手がぱらぱら巻き起こる。
「天女に、その様な過去があったとはな」
「…道理で。こいつと話し方なんかが似てると思ったんだ」
「さん、現代ではビール党だったのか…
と、それはさておき。
いくつか訂正がある」
眼鏡のフレームをくい、と上げながら。
話し出す佐助くんに目をやる。
殆ど動かない彼の表情筋が、僅かに笑みの形を作った。
「確かに、君を見つけたのは謙信様だ…けれど。
あの人は土煙に塗れて、地面に倒れ込んでる君の頭を足蹴にしていたし、それどころか首には刀の切っ先を突きつけていた。
それを俺が必死で止めて…貴重な現代人仲間として招き入れたいって、謙信様に直訴したんじゃなかったっけ」