第5章 感傷主義
「珍しい表情をしているな。
このまま、次の店まで連れて行ってやろう」
「へえっ!!?お、重いですからっ…」
「いや、重くはないぞ」
「…謙信様、何のフォローにもなってないですね!?
嘘でも軽いぞって言ってーっ!!」
ギャーギャーと腕の中で喚く私を尻目に、謙信様はずんずんと進む。
進みながら、暴れると落ちるぞ、なんて怖い事を言うものだから思わずじっと縮こまった。
強制的に距離が近いのをいい事に、こっそりと整った横顔を見上げる…
いつも通り、無表情ではあるけれど。
きっと彼なりに、沈んでいる私のことを心配してくれたのだろうと分かっている。
いたたまれなくて、目の前にあった着物の袷をきゅっと掴んだ。
「謙信様、あの」
「なんだ」
「お酒を飲みながらで、いいので…
お伺いしたいことが、あるんです」