第5章 感傷主義
鬱蒼とした茂みの中、たまの木漏れ日がきらきらとこぼれ落ちる。
こんな獣道の向こうに町なんかあるの、
まさか謙信様、迷ってるんじゃないですか、
そんな軽口を叩く余裕もなく、ひたすらに歩を重ね…
「、こちらに来てみろ」
何メートルか先から、謙信様の声が聞こえてくる。
よろよろと近づき、茂みをかき分けると途端に、ぱっと視界が開けた――眼下に広がる立派な街並みに、思わず目を見張る。
「すごいっ…」
「そうだろう」
「すごいすごいっ!謙信様、早く行きましょうっ!」
「本当に現金な奴だよ…お前は」
早く、と子供のようにはしゃいで急かす私の頭をぽん、とはたき、謙信様は踵を返した。
その手の優しい事と言ったらなくて、ぎゅっと胸を鷲掴みにされる。
「ま、待って下さーいっ!!」
そして気付けばまた、大分とその差は開いていて…
私は疲れを忘れたかのように、謙信様の後を追うのだった。