第4章 刹那主義
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「」
「は…はぃいいっ」
名を呼ばれ、ふと我に返ると。
端正な顔立ちが目の前にあり、思わず仰け反る。
謙信様は何やら不満げな表情を見せながら、私を支えるように添えていた手を離し。
ついでにふい、と顔を背けた。
「それだけ大声が出るなら、大事無いな」
私はと言えば、見られていないのをいい事に深呼吸を繰り返す。
どきどきとはやる胸を、押さえながら。
息を吸って、吐いて…
「助けて下さって有難うございます、謙信様!
やっぱり素敵です、大好きですっ」
軽口を叩いて顔を上げればもう、いつも通り、の筈なのに。
こんな時に限って、謙信様は何も言わず、そっぽを向いたまま。
そのせいで形の良い耳の端がほんの少しだけ、紅くなっているのを捉えてしまう。
調子が狂うから、やめて欲しい――