第4章 刹那主義
「お、おーい…佐助くーん」
熱弁しながら先を行く佐助くんは、面白いほど私の状態に気付いていない。
頭に血が上って来て、大声を出すのもなかなか辛い。
このままじゃ置いて行かれかねないな、どうしよう…そんな不安に駆られ始めた、その時。
ちゃきり、と鞘から刀の抜かれる音。
そして、間髪入れず刀風が吹き。
天井から垂れ下がった綱はぱっくりと切られ、私は床にしたたかに頭を打ち付ける覚悟をした…けれど。
一向にやってこない衝撃、それどころか身を覆う力強く暖かな腕に、恐る恐る目を開けた。
「忘れ物をしているぞ、佐助」
「け、謙信様っ!」
「あ、謙信様…さん?
どうかしたの」
「兎が一羽、無様に罠にかかっていた」
「ぶ、無様とは…!!」
ぶすくれてみるけれど、謙信様は私を抱えた手を放そうとせず。
それどころか、佐助くんをじろり、と冷たく睨みつけたまま。
「組んだのなら、最後まで面倒を見ろ」
「…その通りですね。申し訳ありません」