第4章 刹那主義
武将様たちの居室には見切りをつけ、恐る恐る、少しずつ階層を下がっていく。
流石に階段に仕掛けると危ないからか、今のところ罠が無いことに安心しつつ…
私は自分でも意外な程、先程の一件に考えを巡らせていた。
きっと、あそこは謙信様にとって大事な場所だ。
埃一つ被っていなかった、日常的に訪れて手入れしているはず。
梅ちゃんも入り込んで居たくらいだから、恐らく今朝も。
伊勢さんとは誰なのか、謙信様にとってどんな存在なのか。
思わず勢いで佐助くんに聞きかけたけれど、こういうのはやっぱり直接本人に聞いた方がいい。
変に知識を仕入れると、きっと情報バイアスがかかって良くない。
――そして、はた、と気付く。
私は何故こんな事を、ここまで気にするのだろうかと。
何より、私に知る権利があるのだろうか、と。
知らないということは、知らされていないということ。
知らされていないということは…
知らなくてよいこと?
はたまた、知るべきではないこと…?
何かの予感に囚われて、知らずにはいられない、欲求は収まりそうにない、けれど…