第4章 刹那主義
訝しげな佐助くんの視線を避けるように、今の空気を振り払うように、先へ先へと進む。
そこからは、おっかなびっくり進んだにも関わらず何一つ罠はなかった。
軒猿のみなさんも、流石に軍神の部屋にまで罠を仕掛けようと思わなかったらしい…!
「うぁあ…どきどきするっ!!!」
「…まさか、さん」
「だ、だから違うよ!?
邪な気持ちは一切ありませんっ」
もうきっとこの先に罠はないはずだ、そう油断しきって勢いよく襖を開ける。
途端に上がる、がさがさっ、とけたたましく畳床の擦れる音。
それと共に、私の足元に向かい猛スピードで迫る何かの影。
「ひゃ、ひゃああっ!!!」
「さん、落ち着いて!
罠じゃない…竹だ」
佐助くんの言葉におずおずと目を開けてみる。
足元では、私の足に擦り寄る兎の竹ちゃん。
先程の信玄様の部屋より更に物のない、恐ろしくだだっ広いだけの部屋…
その隅では、兎の松ちゃんがぷすぷすと鼻を鳴らしている。