第4章 刹那主義
なんとか穴から這い出し、その後も幾多の罠を潜り抜け。
気付けば私たちは、信玄様の私室の前にいた――
襖を開けたら、どうなるものか。
疑心暗鬼に駆られながら、並んで襖の前に立ち尽くす…
「うーん、流石に言い出しっぺの部屋に隠すかな…?」
「裏の裏をかくかも、何しろ信玄様だ」
佐助くんがゆっくりと襖を開く。
意外にも殺風景な、殆ど物のない空間が広がっていた。
でも、綺麗だ、整頓されている、なんてのとは少し印象が違う。
漂う、空虚で、物悲しい雰囲気…
思わず言葉を失ったままでいると、佐助くんはゆっくりと襖を閉じた。
「…此処にはなさそうだ。宛が外れたな、困った」
佐助くんも同じように感じたのだろうか、何処か沈んで見える。
理由は分からない、けれど聞かない方が今は良さそうだと判断する。
空気を変えようと右を向いた奥に、更に上階へと上がる階段。
「ねぇ、この上って…謙信様の私室、だよね!?」
「まさか、さん」
「な、何その目…?
違うよ、信玄様のお部屋より可能性あるでしょ!ほら!」