第4章 刹那主義
「…佐助くん、何を欲してるの?さぁさぁ!」
「うーん…特に何も欲してない」
幸運を祈る――
そんな発破を聞くか聞かないかの内に、謙信様は幸村と連れ立って広間を後にした。
二人とも負けず嫌いだし、まずは足で稼ぐタイプらしい。
私と佐助くんは、まず思考を巡らせる…信玄様のヒントめいた呟きが気にかかる。
『俺達が常に持っていて、しかし常に欲している物』
「俺達、ってことはさっきの五人?
さんは含まれるのかな」
「もしかしたら、佐助くんも抜きでさぁ…
この時代の人が絶対持ってる的なものってあるのかな!?」
「それだと、信玄様が『未来ではそれを持っていない』事を知ってるってことになる…
未来の事はあまり説明していないんだ、タイムパラドックスが発生しかねないから」
どうも煮詰まってきた。
信玄様にヒントを、と思ったけれど、いつの間にか彼も広間から姿を消している…
仕方ないか、と佐助くんと共に立ち上がり。
部屋の敷居をまたごうとした、その時。
佐助くんの腕がぱっとこちらに伸びて、私の歩みは制される…
そして間髪入れず、目の前を矢が通過した。