第3章 耽美主義
私の膝上で兎…目元にやたらと色っぽい斑点があるこの子は、確か梅ちゃんだったはず。
梅は、謙信様の元に戻りたいと足掻く。
小さく跳ねてみたり、後ろ爪で蹴ってみたり。
そうこうしている内に、他の兎達がわっさわっさと集まってきて、謙信様のお膝の上はすっかり占拠された。
「ほら、兎だったら…謙信様に愛でてもらえるのになぁ」
梅はその様子に気付いたのか、急にしおしおと大人しくなり。
私の膝の上に落ち着き、目を閉じた。
いや、諦めたのかも知れない――私が兎だとしても、この子か…なんて自嘲。
酔っ払い特有の何にでも沈んでしまう嫌なやつだ、と気付いている。
早く浮上しないと、と…梅の首から背を撫でさすってみるけれど、大して気持ちよくないようで、ぶう、と鼻を鳴らすばかり。