第3章 耽美主義
「謙信様!」
彼を慕う家臣達に取り囲まれ、酌を受け続けて多少疲れたらしく。
ふう、と息をつくと、謙信様は私の隣、信玄様と反対側にすっと腰を下ろした。
「こ、これが両手に花…
それより!謙信様、信濃に連れてって下さるのですか?」
「何処をどう取ればそう聞こえた。勝手に行け、と言ったつもりだが」
「私は忠犬ですので…主が紐を引いてくれなければ、歩き出せないのですよ?」
その言葉に謙信様はぺしり、と私の額をはたいた。
軽い音に対して案外痛く、うぅ、とおでこを押さえて呻く私の肩を信玄様が引き寄せる。
「こら、謙信。美女は愛でるものだぞ?手を上げるなど以ての外だ」
「此奴は今、己を忠犬だと評したのだ。美女などおらん」