第1章 享楽主義
田舎から単身出てきた都会で、友達は出来ても彼氏はなかなか。
自分としては割と切実な悩みなのだけれど、こう言ったら皆からは口を揃えて「理想が高すぎる」と一蹴される。
一度付き合ってみたらいい、なんて周りは簡単に言うけど…
「…そんなもんかなー」
ついこの前、飲み会で出会った人から貰ったメッセージも放りっぱなし。
返信してみようか、いやもう遅いんだろうな…うーん、こんな風にうだうだ言ってたらまた皆にとやかく怒られそう…って、なんで好きでもない人にこんなに悩む必要があるのか。
回り出した思考回路が、アルコールでぷすぷすと音を立てて焦げ付きそうだから、この辺でやーめた、と。
ビールの缶を持ったまま、酔い醒ましにベランダへ出てみる――
「…何、あれ」
何筋か向こうの住宅街の中、ぼんわりと緩い光が集まる場所がある。
今日は、何も祭りなんかやってない。
出店なんか出てないし…手持ち花火をするような場所でもない。
不思議な程静かで、いつもよりほの暗く感じられる夜に目を凝らす。
そして無性に、その光が気になって仕方がない。