第1章 享楽主義
「ふぁーーー!!!
今日も終わったビールがうまいっ」
また、一日が恙無く終わった。
職場と家の往復だけでいっぱいいっぱいの社会人生活も、ようやく三年目に突入し。
日々の楽しみとしてお酒を嗜んだりして、私も大人になったもんだ、と何やら無闇に感慨深い。
スマホをチェックしてみると、親からたまには帰ってこい、のメッセージと…友達からは、飲み会という名のきっと合コンのお誘い。
どちらもふざけたスタンプを一つ送り返して放置、で十分の内容だ。
ごくり、と喉を滑っていく炭酸がやけに痛くて顔を顰めながら、テレビをつけてみる。
録り溜めたドラマの総時間数は、24時間を超えていた。
一気に見る気力が無くなり、げんなりして電源を落とす。
「お酒は冷えたビールがいいー、肴は炙った明太子でいいー」
機嫌よく鼻歌を奏でながら、冷蔵庫からビールとタッパーを取り出し、さてもう一杯。
大学を卒業して、就いた仕事は営業職。
女だてらにがむしゃらにやってきて、それこそおじさまを掌で転がすようなスキルも身についた。
業績も上がっているし、仕事には不満がない。
あえて言うなら、たまに終電で帰れなくなるのと、たまに休日お呼び出しがある事くらい。
不満があるのはそう…私生活に、他ならない。