第3章 耽美主義
「姫、今日もお酒は進んでいるかい…珍しい、一人なんだね」
「信玄様!私だってしっぽり一人飲む時もあるのですよ。
見ての通り、美味しいお酒にご満悦です」
「それは良かった。
故郷の地酒なんだ…それより、此方に来てみるといい」
信玄様が差し出された手を、ほんの少しの迷いの後に取る。
それを頼りに向かった先には、思いの外ぐだぐだに潰れた幸村がいた。
「わぁ、珍しい。お部屋に連れていきます?」
「いや、幸は身体は強い。
吐いたり粗相をする事は無いんだよ。
これはたまの息抜きだから、このままでいいんだ…
も、話を聞いてやってくれないか?」
そう言った信玄様の表情は、何にも形容し難いほど優しさに満ち溢れていたものだから。
促されるままに、なみなみとお酒の入った徳利を持って幸村の向かいに座った。