第3章 耽美主義
謙信様も、よく月だの花だの、自然を愛でながらお酒を呑まれてるな、なんて思い出すだけでふんわり頬が緩む。
その時の柔らかい表情と言ったら、それはもう女性顔負けの美しさなんだよね、と…それだけでこちらのお酒も進むというものだ。
(さっきの挨拶も、格好良かったなぁ)
生まれながらに、人の上に立つ事を定められていたのかも知れない、なんて事をいつも思わされる。
堂々とした眼に、声。
話し方から、身振り手振りに至るまで。
激しさと、冷静さの緩急が見事で。
大声を張り上げているわけじゃないのに、一言一句が大広間の隅々まで響き渡る。
ひとつひとつの所作にきゅーっと胸を鷲掴みにされるような心地。
気持ちよくなってちびり、ともう一口。