第18章 月の兎は冬に焦がれる
必死に首だけで振り返り、口を開く。
謙信様は私の表情を見ると、好き勝手に動き回っていた手を止めた…
そして渋々と言った様子ではあるけれど、じっと目を合わせ、私の言葉を待ってくれる。
そういう所が好きなんだっ…!!
なんて、きゅん、と胸を締め付けられる…
出会ってそこそこ経つのに、いつまできゅんきゅんさせられるのか?
ずっとこれだと困る、心臓がもたない…!
そんな馬鹿げた事を考えていると。
待たせすぎたのか、謙信様の眉間に皺がよる。
あわあわと、また口を開く──
ずっと聞きたかった、胸の底に溜まっていた事。
「あの…謙信様、いつも私の事うつ伏せにしたり。
こうして、背中から抱っこしてくれたりするじゃないですか」
「…いつも、だったか?」
「…えと、割といつもです。
でね、それって…どうしてですか?」
あの夜から、ずっと気になっていたこと。
今更、伊勢姫様の代わりに抱いているからかも、だとか。
私の顔を見たくないからかも、なんて卑屈な事は思わないけれど…
謙信様は、目を伏せて考え込んでいる様子だ。
どきどきとしながら、その答えを待つ…