第17章 利己主義
佐助くんの口振りから、だいたい何があったかは想像がつく。
にわかに信じ難い話ではある、けれど…
「そうだ、鞠さんはっ…!」
きょろきょろと辺りを見渡してみる…
呆然と、空を見上げて座り込む鞠さんの元に信長様が向かっていく。
それを見届け、安堵の息をついた私の無事を悟ったのか…
謙信様の手はすっと離れていった。
その事が少し寂しくて…
また会えたのになんて贅沢な、と自嘲する。
そして謙信様は、片手に持っていたままの刀…よく見知った姫鶴一文字を見分するように、陽光に翳す。
すると、私でも気付くほどの刃こぼれが目に付いた。
「謙信様っ、それっ…」
「あぁ…
風の渦に刃を立てた時に、欠けたとみえる」