第17章 利己主義
「信長様ぁっ…!!」
鞠さんの叫び声は相変わらずで、耳を塞ぎたくなるけれど…
倒れていた柱にしがみついている手を離すのが怖くて、我慢する。
心底から彼を信じて、頼り切っている姿──
羨ましいような、気恥しいような、複雑な気分になる。
男だから、女だから何なの?
そんな気持ちで、営業の時もやってきた。
男に頼りきる、すがりつく、なんて嫌だもの。
そして、そうか、私はずっと鞠さんの事が羨ましくて…
その逆に、気に食わなかったんだな、と気付く。
鞠さんみたいに素直になれたなら、何か変わっていただろうか?
「謙信様、」
彼から向けられる視線を真っ直ぐに受け止めて、愚直に信じていたなら。
彼だけでも幸せになればいいなんてただの強がりで、
誰かの代わりでもいいなんて勿論嘘で、
他の誰でもなく、私こそが貴方の隣にありたいのだと、
良い子ぶったり取り繕ったりしないで、
正直に心の内を、口に出せていたなら…
「謙信様ーっっ!!」