第17章 利己主義
悲痛な叫びが、胸に刺さって痛む。
宥めようと呼んだ名前で、手痛いしっぺ返しを食らった…
思わずムッとして、口を開く。
「余裕なわけないっ、私だって春日山に帰りたいんだから!
だいたい、元はと言えば鞠さんが此処に呼んだんでしょ!?」
「じゃあ、なんでそんなに平気なのっ!?」
「平気じゃない、けどっ!
謙信様に、幸せになって欲しいんだもの…
そこに私がいようがいなかろうが、関係ないんだもの!!」
感情が高ぶって、溢れてくる涙が風に流れていく。
その間にも、鞠さんが信長様を必死に呼ぶ声が響き…
風も、目に見えて強まっていく。
何かに掴まっていないと、そろそろ辛くなってきた。
姿勢を低くして、飛ばされまいと堪える。