第17章 利己主義
──私のせいで、光秀さんはあらぬ疑いの種をまた抱えてしまったのか、と漸く気付く。
何度も助けてもらった、慰めて励ましてくれた、意地悪な言葉の裏に人一倍の優しさを隠して…頭の中で、柔らかくてひんやりとしたあの笑顔がぐるぐる廻る。
「信長様と恋仲にある私が、光秀さんを心良く思ってない家臣団にそう進言したら…?
実はあの時見たのは光秀さんかも知れない、怖くて言えなかった、なんて泣いてみせたら…
幾ら信長様が庇っても、彼の地位は揺るぐかも、ね?」
「…わぁ…
鞠さん、ゲス過ぎません…!?」
言うに事欠いて、やっと捻り出した貶し文句。
何とでもどうぞ、なんて余裕ぶって笑う鞠さんを、思い切り睨みつける。
──光秀さんは、あんなに鞠さんの事を思っていたのに…!