第17章 利己主義
嫌でも…って。
意味が分からず、次の言葉を待つしかない私に。
鞠さんは、また笑いかけた。
「私は初め、ここに…本能寺の変の、真っ只中に落とされた。
そして燃え盛る炎の中で、気を失っている信長様と出会ったの」
その本能寺が段々近づいてくる。
立派な大門から覗き見えるその中は焼け落ち、廃材もそのままに荒れ果てている。
「丁度、信長様を討とうと忍び寄っていた人影が、私に気付いて逃げるのを見たの。
その後、その人影は信長様に恨みを持つものだったと分かり…反乱はひとまず鎮まった、けれど」
「本能寺の変…って、言うと、」
頭の中で、歴史の教科書をパラパラとめくる。
本能寺の変って言うと、戦国時代の一大イベント。
私達が居るのが、その後なら…
「…そう、本能寺の変は明智光秀が起こしたものだと、先の世で私達は思っていたけれど、実際は違った…
でも、歴史を知っていて、現場を見た私が。
今から、発言を覆したらどうなるかしら?」
「は、あ…!?覆すって、今更っ…」
「そうね、今更だわ。
…でも、光秀さんは元々疑われやすいのよ。
行動が謎めいてる、って。
今だって安土には内密で、貴女の手助けをしているんだもの」