第17章 利己主義
悦に入ったような、恍惚とした笑顔でそう言い放つ鞠さん。
だいぶイッちゃってるな…なんて、並んで歩く間隔を少し空ける。
「…あの、鞠さん。
私は、此処に居たいんですよ…
鞠さんには別に近付かないからほっといて欲しい、ってのが本音なんですけど」
「うーん…そうは行かないのよね。
私の完全な世界が、貴女が割り込んできたせいで壊れてしまったもの」
鞠さんは、放さないとでも言うように、私の腕にきゅっとしがみついた。
まるで飲みに行った帰りみたい、縋り付くようなその仕草は女子力満点で。
いざと言う時には見習おう、なんていつも思っていたんだった…
「みんなが、私のことが大好きで、気になって仕方なくて…
体を張って、命を懸けて護ってくれる。
そんな、お姫様みたいな世界だったのに」
「…みんな、って」
「光秀さん。
ちゃんの事が気になってるみたい」
くすくすと微笑む鞠さんの手に、力が篭もり。
握られた腕が痛いほどで、思わず顔を顰める。
「二年もかけて私が築いた関係を、貴女はいとも簡単に飛び越えていくの。
あの時も…今も、そう。
若くて元気で可愛らしいのよ、それが羨ましくて、憎らしい」
鞠さんの綺麗に磨かれた爪が、ぐり、と掴まれた腕に食い込み。
鋭い痛みに息を呑む。