第17章 利己主義
突拍子の無い言葉に、思わず失礼なくらいの呆れ声を上げてしまったけれど。
鞠さんは、不敵な笑みを浮かべるばかり…
「未来に帰らないって、私と佐助くんが決めてから。
ワームホールが発生する兆しがあれば、予測して教えて貰うようになったの。
そこに近寄りさえしなければ安全だから、って」
私の視界の端。
私達の進む先、本能寺の真上辺り…
青空の中にポッカリと浮かぶ黒雲が、ばりばりと雷鳴を孕んで大きくなっていく。
「この二年で、佐助くんの観測はどんどん仔細になったの…
今や予測発生場所から、日時に至るまでよ」
「それが今日の正午、本能寺だってことですか?」
「その通り。
この前貴女を連れて佐助くんが安土に来たのは、このワームホールの発生を報せてくれるため。
ワームホールは私にとって脅威だけれど、使い方をちゃんと考えれば武器にもなるのよね…!
気付いた時には、目からウロコだったなあ」