第17章 利己主義
「っ、鞠さんは、皆に、好かれたいんですかっ…?
織田信長様と恋仲なんでしょう!」
「そういう…すぐに正論を言うところも、疎ましいのよね」
鞠さんはぽい、と私の腕を放り投げるように離した。
その力に翻弄されて、ふらついた私の足を見下ろす目は驚く程に冷たい。
「女の子なんだから、誰からも好かれてちやほやされたいのは当然。
ちゃんだってそうでしょ?」
「私はそんな事っ…」
「えぇ?現にそうだったじゃない。
今だって、好きな人がいるって言いながら…その実、光秀さんにも媚を売ってるんでしょう?」
「私はそんなつもりで、光秀さんと接してた訳じゃありませんよっ」
「なら、はっきりと否定すれば良い。
拒絶すればいい、それが光秀さんのためなんじゃないの?」
「私には好きな人がいるって、光秀さんにもちゃんと伝えてます!」
ぎゃーぎゃーと言い合いながら歩く私達を、怪訝な顔で見ながら京の人々が通り過ぎていく。
その間にも雷雲は大きさを増し、ごろごろと音を立てる…