第16章 弁論主義
大原を越え、修学院を下がると、賀茂川に行き当たった。
やっぱり京都はこの時代も京都で…今までにも増して、高い建物が無く遥か遠くまで見渡せる。
青々とした山々を眺め、山頂からもうすぐ赤くなりそうな気配に心が躍る。
その名の通りしだれ柳が川辺へと垂れる、柳の辻から出町へと橋を渡ると、もうそこは碁盤の目の中。
往来で馬を下り、引いて歩く。
東西南北に整備された通りは、やはり今まで通ってきたどの街とも趣きが違う。
「先の戦乱の痕も、今や見つけられないな」
「先の戦って言うと…応仁の乱?」
「お前達の世ではそう呼ぶのか。
京の街が、一面焼け野原になったと聞いている」
東大路を真っ直ぐ南へと下がる。
朱塗りの柱と白壁のコントラストが雅やかだ。
段々と上っていく太陽の光で、少し汗ばむ程…
「光秀さん…約束の正午まで、まだ暫くありますよね?」
「あと一刻はあるが。どうかしたのか」
「…じゃあ…ちょっとだけ本能寺は通り過ぎますが、寄りたい所があるんです」