第16章 弁論主義
「光秀さん…もうすぐですね、宜しくお願いします」
「ああ」
首だけ振り返り、そう声をかける…こんな私の一喜一憂をわかり切っているように、光秀さんは余裕すら感じさせる笑顔を浮かべた。
その表情に安堵を貰って、また前を向き直る。
昨日は結局、随分と遅くまで起きていた。
抱き合った姿勢のままで、光秀さんは色々な話をしてくれた…
織田信長様に仕えるまでは、流浪の身だった話。
鞠さんが落っこちてきた時、物の怪の類いだと皆で訝しむ中…信長様だけは面白がって彼女を傍に置くようになった話。
私も話をした。
春日山城には兎が沢山いる話。
私はどうやらペット扱いされていて、漸く犬くらいの扱いにはなれた話…
沢山笑った分、同じくらい二人して寂しくなった。
二人でその寂しさを分け合えたら楽なのに、そうも行かなくて。
一人になりたくなくて、ついつい夜更かしをした割に、朝もスッキリ目覚めはよかった。