第16章 弁論主義
今朝もまた、抜けるような快晴だった。
日も上り切らない時間に出立したから、白んでいく空の色の移り変わりを、ずっと眺めていたけれど。
聳え立つビルのような、邪魔する物のない広い空。
雲一つなく、澄み渡った青へと変わっていく。
雄大な自然に触れた時、この時代はいいな、とぼんやり思う。
簡便さと引き換えと言うなら、幾らでも不便を我慢したくなる。
謙信様も、自然を愛でるのがお好きだ。
アテがなくても景色で呑める、なんて粋な事を仰っていたから、その影響かも知れない…
こんな景色を、二人して眺める事が出来たなら──
そこまで考えて、きゅっと唇を噛み締める。
今日は、運命の日なのだ…惚けてる場合じゃない!