第15章 行動主義
「お前と鞠は、同じ仕事をしていたのだな」
「そうですね、鞠さんは私の…とても良い先輩だったんですよ」
私の口ぶりと表情から何かを感じ取ったらしく。
光秀さんはそうか、と言ったきり。
何があったか聞いてくれるな、といういつかのやり取りを覚えてくれているのだろう。
それに甘えた私の口は滑るように、思い出を語り出す…
「鞠さんはとても頼りになる先輩で、教え方も丁寧で。
いつも可愛くて、お客様からもモテモテだったんですよ」
「彼奴は愛想が良いからな。
想像がつく」
「お酒を呑むと陽気になって、ケラケラ笑うんです」
「それは、今も変わらない」
「酔っ払った鞠さんは、子供みたいで可愛くて!
私は絡み酒だから…よく迷惑をかけたものです」
「鞠は酔っ払いのあしらい方が上手い。
の世話で鍛えられたか」
「…ふふ、そうかもしれませんねぇ」
また、そうなれると思いますか…?
聞こうとして、止めておいた。
光秀さんを困らせるだけだと、容易に想像がついたから。
そんな風に話し込む私達の間を、秋めいた風が吹き抜け、ふるり、と身を震わせる。