第15章 行動主義
「…っくしゅ。冷えてきましたね」
へへ、と鼻をかきながら笑いかけた、およそ色気のない私の空いた手を。
光秀さんが掴み、きゅっと力を込めて引く。
抵抗する暇もなく、ぽすり、と音を立ててその胸に収まった。
「み、光秀さんっ…!?」
「何故俺がここまでしてやるか、考えたか?」
その言葉に、ずきり、と胸が痛む。
「光秀さんが、優しいからでしょう?」
「…聡いお前なら分かっているだろうに、随分な事を言う」
光秀さんの寂しげな声に、揺らがない訳が無いけれど。
鞠さんの代わりを、演じてあげる事など出来ない…
圧倒的に、好きの種類が違うから。
身を切られるような思いを我慢してでも、一緒に居たいと思うのは、謙信様だから──
「覚えておくといい。
男が優しい時は、基本的には下心つきだ」
「わぁ、そうなんですね!
肝に銘じておきます」
「お前…今しているのは、明らかに男女のそれだろう」
「えー!友達同士でも、抱擁はしますよ?」
切なさごと抱き締めるように、ぎゅうっと腕を回し返す。
「…男を弄ぶ、悪い娘だ」
「そういう光秀さんは、意地悪なお兄さんですねぇ」
くすくすと笑い合い、しかし今は視線を交える事はせず。
寂しい者同士、身を寄せあっていれば寒さも忘れる心地で。
月がどんどん落ちていくのを、そうして暫く、二人して眺めていたのだった。