第15章 行動主義
俺も内心、緊張しているのかも知れん──そう言って薄く笑った光秀さんは、何か考え込む様子で、真暗な闇をただ見つめている。
私も居心地無く視線をさ迷わせ…やがて、先程までのように月を見上げる姿勢に落ち着いた。
優しく甘やかな光が、謙信様にも降り注いで居ますように。
彼の上を、叢雲が覆っていませんように──
「」
いつも通り、謙信様に侵食された思考から引き摺り戻されるように。
光秀さんの声に、はっと我に返る。
「ずっと、考えていた。
…京に上がるのは、やはり止めておいた方がいい」
「…ありがとうございます、光秀さん。
心配して下さって、でしょう?」
「お前達の関係も知らず、こんな事を言うのは無礼かも知れないが。
鞠からは、底の知れない狂気を感じる」
光秀さんは、まるで言葉を探しながら話しているように。
ゆっくりと、噛み締めるようにそう言った。
光秀さんは、優しくて女の子らしい鞠さんの事が好きだった筈なのに。
その狂気とやらを呼び覚ましてしまったのは、他でもない私…
彼の優しさに嫌という程触れた今、申し訳なくて目も当てられない。