第15章 行動主義
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約束の葉月の十五日は、もう明日に迫っていた。
現代で言えば、中秋の名月…目前に控え、ほぼ満月まで膨らんだ月を眺めながら。
鞠さんから貰った、手紙の内容を思い返す。
秋めいた風がカサカサと音を立てて枯れ草を煽り、何とも物悲しい雰囲気を醸し出している。
…手紙にあった、元の世に戻る、なんて事は可能なんだろうか。
でも、私が帰りたい、と願わなかったから教えて貰っていないだけで。
実は佐助くんも、知っていたのかもしれない。
…織田信長様と恋仲にあると言う、鞠さんが帰りたいなんて本気だろうか。
私が余りに疎ましいから逃げたい?
もしくは、光秀さんの言う通り何かしらの罠なのか?
手紙は私がイメージする鞠さんそのままで、裏も何も見えてこない。
そもそも申し出が突拍子も無さすぎて、企まれていたとしても検討もつかない…
うーん、と溜息、見上げた空にはぽっかりと真っ黒な中に一つだけ、浮かぶ月。
謙信様と見れたらいいのに、お団子を片手に盃を傾けあって、なんて性懲りも無く想像する──
「気が昂って眠れないか」
「…光秀さん、起きてたのですか」
「ずっと、起きていた。
考えの邪魔をしてはと、追いかけまいと思っていたが…
戻りが遅いと気になってな」
「わあ、それはご心配をおかけしました…!」