第15章 行動主義
真っ黒な毛並みが美しいそのお馬さんは、とてもよく走った。
光秀さんの言うことをよく聞いて、乗り心地も良く。
地面の悪い所を走る時には、少しスピードを落とすような、馬らしからぬ気遣いを見せてくれた。
光秀さんは元来無口なタイプらしく、此方が聞いたら丁寧に答えてくれるけれど…
基本的には私たちの間に会話は無かった。
そうなると、お馬さんの進む軽快なリズムに合わせてついつい物思いに耽ってしまう。
鞠さんは何を企んでるのかな、とか。
こんなに疑ってかかって、万が一仲直りしましょ、とかだったら謝らなきゃ…
この様子だと、それは無さそうだけど。
この一山乗り越えたら、謙信様との関係も何か変わるだろうか、とか。
…いや、変えなきゃいけないとしたら私の心持ちだな。
まずは黙って出てきたから平身低頭謝らなきゃ。
私達の関係は、酷く歪ではあるけれど。
どんな形でも傍に居たいと願ったのは私で、受け容れてくれたのは彼なのだ。
もう一度それに感謝して、心を入れ替えて、「替わり」を全うすればいいだけ──
そんな風に難しい事を考えた所で最終的には必ず、早く謙信様に会いたいな、という思考に行き着く。
どうしたって、呑気なものだった。