第15章 行動主義
「そ、そうなんですね…?」
「根は真面目だが…
情に厚過ぎて、俺のような輩に良い様に使われている節がある」
思わずきょとん、と見つめ返す私に、どうした?と怪訝そうな顔で光秀さんが尋ねる。
それにとうとう耐えかね、思い切り吹き出す…
「なんだ、何かおかしいか」
「だ、だって…!
いつも大人っぽく冷静って感じなのに、ふっつーに悪口言うから!
光秀さんにもそういう所あるんだなぁって!」
私の返事に少しむっすりと口元を歪めたのにも、更に笑いを誘われて。
ひーひー言っていると、馬はいらないか?なんて脅しの言葉が返ってきた。
それは困る、と笑いを押しとどめようとするけれど…
楽しそうに優しそうに此方を見ている光秀さんと目が合い、今度は同時に往来のど真ん中で吹き出すのだった。
そうして、厩で手に入れた馬は黒毛の雄馬だった。
鞭を入れると雄々しい嘶きを一つ上げ、地面を力強く蹴って駆け出す。
「流石は犬だな、良い馬を出したものだ」
嬉しそうにぽつり、と漏らした光秀さんの声を、背裏で拾いながら。
今は石川…京都は間近だ、と思うとどきどきと鼓動が逸る。