第15章 行動主義
そして行き交う女性という女性が、一人漏らさず光秀さんの顔に見惚れているのに気付く。
うんうん分かるよ、なんて小さく頷きながら、ちらりと横を歩く光秀さんを観察してみる。
真っ直ぐ前を見据える切れ長の眼は涼しげで、長い睫毛がばさり、と影を作っている。
色素が相当薄いらしくて、真っ白な肌に黒みの無い琥珀色の瞳。
高身長な上に足が恐ろしく長くて、この時代の人にはきっと珍しいくらい…
「何をじっと見ている?」
流石、武将様は目敏い。
バレていたと気付き苦笑いしながら、視線を彷徨わせ、意地悪を言われない為の言い訳を探そうとする…
そんな私の目に、ぎらぎらとした色合いの建物が飛び込んでくる。
それはいつか、謙信様と入った茶屋によく似ていた。
きっと用途も同じだろう、何処の町にでもあるんだな…
そりゃあ、そうか。
何処の街にだって、恋人はいるもの…
例えば恋人、じゃなくたって入る用事はあるし──
「…あの建物に興味があるのか?」
「え、っと…いやいや、興味なんて、」
「にしては、熱心に見ていたな。
お前が入りたいなら、付き合ってやっても良いぞ」
光秀さんの言い草に、少し塞いだ事も忘れ、思わずぎょっとして。
その真意を探りたくて、じっと見つめ返す。
私が知らないと思ってからかっているのか、それとも…?