第15章 行動主義
──────────
「…佐助、どういう事だ」
「ですから、いないんです。
民からの嘆願書にあった、一揆衆など何処にも」
先に軒猿を偵察に出していたらしい、佐助からの報告に、思わず腰の愛刀に手を掛ける。
が、真っ直ぐ向けられたままの視線に気を削がれ、今は一先ず、と柄を握り締めるだけに留まった。
「この上杉謙信を謀って、何処の何奴に得があると思う」
「…俺も、そこは考えてはいるんですが」
何事も、自分で確かめないと気が済まない。
一番近くの小高い丘に佐助と二人で上る。
そうして上りきった先、眼下に映るのは、己の兵のみだった。
己にもう一度問いかけてみるが、恨みを買うような憶えもなく。
…正しく言うと、恨みを抱くまでなく。
敵とみなした者は、全て完膚なきまでに叩き潰して来た。
それ以外の者には、義を通してきたつもりでいる…
横を歩く男は、何かを考えているようで言葉少なだ。
佐助は、上杉軍に取って天からの授かり物だった。
頭脳明晰で、身体能力も優れている。
有り余る知識と洞察力をもつこの男がついていれば、天下を取れるのではないか?
そんな世迷言が、家臣の中で上がったこともあったが…
天下を治めて、その後に何があるのか?
戦のない平穏な世になど興味はなく。
金にも、領土にも、今や興味はない。
戦に身を投じる事こそが、この生命の意義で──