第15章 行動主義
口を開けば謙信様の事を話し。
かと言って口を閉じても、考えるのは謙信様のこと。
どれだけ思考を侵食されているのか、なんて自嘲しながら…
ぼんやりと熱を持ったままの、肩口の傷を押さえた。
彼はどんな気持ちで、また私としようと思ったんだろうか──
「腹が膨れたか」
「…えっ…あぁ。勿論食べますよ!ちょっと休憩してただけですっ」
考えれば考える程、お腹の底に溜まっていく澱みで満腹になる。
段々箸の進みが遅くなったのを、見兼ねてだろうか…
声をかけてくれた光秀さんに慌ててそう返すと、お餅を口一杯に頬張り、お約束のように噎せる。
口の中、至る所に引っ付いて飲み込めないお餅に弄ばれていると、光秀さんが背を摩ってくれて。
なんとか無理矢理に飲み込んで、深く息をする。
「…お前が、」
「っげほっ、うぇ…?なんですか、光秀さん」
「本能寺に行く、と言うとは思わなかった」
苦笑しながら、光秀さんが話しかけてくるのを。
咳き込む私は、涙目で見つめる。
その質問、今ですか?…なんて言いたくなるけれど、お茶のおかわりを貰ってくれたから憎まれ口と一緒に飲み込んだ。
「光秀さんが言う通り、罠かもしれないですもんね」
「と言うより、十中八九罠だろうな」
「…そんなに高い確率?鞠さんエグいっ」
けらけらと笑いながら、ご主人にご馳走様、と声をかけ茶店を出る。
安土で何を言われてるんだか、想像するだけで武者震いだ。