第15章 行動主義
「…もう、行きました?」
「ああ、大丈夫だ」
光秀さんは一足先に隠れていた茂みから出ると、手を差し伸べてくれた。
それに甘えて、よっ、と叢から足を引っこ抜く。
朝から順調な旅路だった。
光秀さん曰く目標より早く進んでいるから、ゆっくり休憩を取ろうと立ち寄った茶店。
馬を裏に繋ぎ、注文をして、お茶が運ばれてきていざ、と思った瞬間。
少し向こうから聞こえてくる馬の嘶きと蹄音…
そして、光秀さんがいち早く毘沙門天の旗印に気付き。
お茶を啜り出していた私の手を引き、茂みへと飛び込んだのだった。
「…なんだいあんた達、面倒ごとは御免だよ」
茶店のご主人が、頼んであった善哉を手に怪訝そうな顔をしている。
「驚かせて済まない。
途中で立ち寄った迄だから安心しろ」
「しかし、上杉様に追われてんのかい?
あの方はお強いからね、百戦錬磨の剛力だ。
大変だろう」
「そういう訳では無いから、心配は無用だ。
主、何処で誰が聞いてるやも分からんぞ」
出歯亀好きなご主人を追いやると、光秀さんも漸くお茶に口をつけた。
私はと言えば、意外と美味しい善哉に舌鼓を打ちながら…
流石謙信様のお名前はとどろき渡っているのだな、なんて見当違いな事を考える。