第14章 自由主義
佐助くんが、気付いてくれますように──
自分じゃ何一つ出来ないんだよな、と改めて思い知らされた気分で。
もう一度よろしくお願いします、と…
闇に消えそうな程潜めた声で、光秀さんに頭を下げる。
白み出す前の一等暗い時間に、足音を立てないように下り立ったのに。
光秀さんと私が話をしている間にも、イビキをかいて寝ていたはずの梅ちゃんがかさかさと音を立て、廊下まで這い出てきた。
しー、と声をかけて、頭をひとなで。
謙信様のお見送りを宜しくね、なんて私の気持ちが伝わったかどうかは…その眼からは、読み取れないままだけれど。
なんだか勇気を得たような気持ちで、意気揚々と足を踏み出すのだった。