第14章 自由主義
「…
こんな事は、言い難いが。
彼奴の罠では無いかと思うぞ」
「鞠さんの罠、ねぇ…?
…ふふ、光秀さんってばどっちの味方なんですかね?
ありがとうございます」
思わず笑ってしまうと、光秀さんも困ったように、小さく笑っている。
すごくすごく優しい人なんだろう、たまーにひんやり意地悪だけれど。
あんまり困らせたくないな、と思うのに、今の私には他に頼れる人が居ないのだ。
「ついでにね、お願いが…
私を、本能寺に連れてってくれませんか」
「…言うと思っていた。
俺は、忠告したからな」
「その忠告を受けても尚、行きたいんですよね。
という訳で、よろしくお願いしまーす!」
いったい、何処からが鞠さんの思惑通りなのだろう。
光秀さんに気に入ってもらえて、こうしてざっくばらんに話せるようになった所から?
だとしたら、私だけじゃなく彼の身も危ないのだろうか…
「えーと、じゃあ…準備するから暫く待ってくださいねぇ」
「目の前で着替えられようが、俺は気にしないが?」
「あはは、そんな事言っちゃって。
私が気にするのですよー」
意地悪な物言いと裏腹に、光秀さんは素直にあちらを向いた。
さっさと身支度を整えながら、鞠さんの書状を小間机にわざと広げておく。