第13章 反証主義
「他の男になど、その様な事は言っていないだろうな」
「当然、です…謙信様にだけ、ですっ、」
乱された胸元を、手が、唇が下っていくのに息が上がる。
伊勢姫様ってどんな人だったのかな、きっとお綺麗で、胸も大きくて、白くて、華奢で、謙信様を悦ばせる術を沢山知っていたんだろう。
幾度肌を重ねれば、そんな彼女に追いつける?
「っ、あ、」
際どい所を掠めて行った指に、思わず艶めいた声が漏れる。
そして謙信様の唇が、柔く弧を描いた。
じゃあ、今の反応は正解だったのかな?
奥ゆかしいって言うくらいだから、もっと恥じらったりしたんだろうか。
なら、初めから私は不正解じゃないか。
ぐるぐると回る思考回路、まるで他人事のように謙信様の手の動きを目で追う。
ふわり、と抱き上げられると、敷物の上に下ろされる。
そしてぐるり、とうつ伏せに回転させられた。
肩口を熱い舌で抉るようになぞられ、あの夜を思い出して感極まったような声が漏れる。
恥ずかしさに唇を噛み締めていると、歯を突き立てられる鋭い痛みが走る。
あぁ、また酷い痕になる──
そんな事にも漏れる声が恥ずかしすぎて、支えにしている自分の手に顔を埋める。
真っ暗になった視界で、謙信様の顔は見えない。
謙信様にも、私の顔は見えない…そうか、代わりなんだもの。
顔なんて、見えたって見えなくたって、代わりなんだからどうでもいい──